悪魔

圧倒的だった。
教団騎士が束になってかかっても、男はまるで子供相手に遊んでやっているような
態度でひらりと攻撃を交わし、頭が狂ってるとしか思えない剣捌きで敵を薙ぎ倒して。
誰の目から見ても、手を抜いているということは明らかだった。
それなのに、太刀打ちできない。
反対に、こっちがピンチに陥る。
どんな汚れ仕事も、己の実力で片付けてきたネロにとって、これは最大の屈辱だった。
手加減された相手に敗れ、取り逃がすなど。
あってはならないことだ。

クレドに追跡を命じられたことは、ネロにとって幸運とも言えた。
もう一度戦って、今度こそアイツをぶっ倒す。
赤いコートの男を頭に思い浮かべ、ネロはレッドクイーンを握る手に力を込めた。
グリップを捻ると爆音が響き、ニヤリと口許に笑みを浮かべて。

「・・・腕慣らしには、丁度いいか」

肩越しに背後を振り返り、首を鳴らした。
歪んだ影が足元まで伸びて、ケタケタと笑い声のような奇声が辺りの静寂を破る。

「来いよ!遊んでやる」

地面に剣を突き立てて挑発すると、闇の中から現れた悪魔が飛び上がった。
体からボタボタと異臭のする液を滴らせながら踊る様に、ネロは少しだけ顔を顰めて。
赤い炎を吹かしたレッドクイーンが、悪魔に食らい付く。
吹っ飛ばされた悪魔は、壁に激突して、袋のような体から派手に液を飛び散らせた。
びちゃっと嫌な音がして、コートの裾に視線を落としたネロは一気に機嫌を悪くした。

「・・やってくれるな」

剣を銃に持ち替えて、悪魔の頭に狙いを定める。

「これでチャラってことに、してやるよ」

リボルバーから弾丸が吹き出し、ピンポイントに悪魔の頭を貫いた。
最後の断末魔が響いた。
長身の銃を肩に担ぎ、ネロはバラバラに崩れて灰になった悪魔の痕跡を見つめる。
アイツ…あの赤いコートの男も。
人間ではなかった。
胸を貫いたというのに、平気な顔をしていたのだ。
悪魔、なのだろうか。
でも。だとしたら、ネロはあんな悪魔を見たことがなかった。
銀髪に、青い瞳。そのとき、ふと、教団が信仰する伝説の悪魔が頭を過り、
ネロは自嘲気味に笑った。

「なんだっていうんだ」

自分の右手に視線をやって。
少しだけ、驚いた様子を見せていた男の様子を思い出して。

アイツは、追わなくてはいけない。
漠然と、そんな気持ちが湧いた。
この時、憎悪だけではない、何かを確かめたいという想いがネロの心に湧いた。
とっ掴まえて、知ってることを吐かせて。
殺すのは、それからでもいい。
この右腕に関するヒントを、あの男が持っているような気がした。





ブラウザバックでお戻り下さい。